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TO BE FREE

〈自分になる〉ために

ツバメの唄が聴こえた

そして11月のあの日からあっという間に終わりは訪れた。
出産のため実家に帰っていた奥様と、子供を迎えに行く。
束の間の一人暮らしを、満喫したとは言えないだろう。
やはり、家族がいたほうがずっと楽しい。

誰かと会うこともできたはずだし、
何かしら新しい経験をすることもできたはずだが。
僕は概ね心静かに過ごした。

一人の男に、家族ができて、また再び一人になったとしても、
決して元には戻れない。
明らかに何かが失われているのだ。
そして、それを埋めるものが家族なのだろう。

家族で十分だ、と思った僕は、
関係性の広がりをある意味で閉ざしているのだけれど、
だからといってそれが悪いことだとはちっとも思わない。

可愛らしく楽しい奥さんがいて、何人かの大切な友達がいる。
(妻・奥さん・連れ合い、どれもしっくりこない言葉だ。
 恋人と言いたいが、意味が変わってしまう。)

いつか、春の陽だまりの中を僕は湯川潮音の「ツバメの唄」を聞きながら
歩いていた。
甘い香りが漂うような空気の中を、
心地の良い孤独に包まれながら歩いていた。
「誰かに会いたい」と思いながら。
誰一人思い浮かべることもできずに。

その道を、僕と妻と子供が歩くのだとしたら、
それは物語だ。

感謝をしたいと思う。
僕は、大きな子供でしかない今、そう思う。