TO BE FREE

〈自分になる〉ために

断片

暑い日が続く。
あらゆる空気が僕にまとわりついてくるようで、
そしてそれを振り払いもできないものだから、
いっそう悲しくなってしまう。

太陽・汗・肉体・血。
そんな季節だ、過剰なのだ。
そんなときに、現われる一瞬の「涼」に、
僕は心から救われている。

そんな一瞬は、
「蘇州夜曲」を聴いている帰り道であったり
黒髪の物思う少女とすれ違った時であったり
お店で真新しいリネンに触れる時であったり

心にどうしてもたまってしまう淀みは
出来る限り流してしまいたいものだ

僕の実家の前には目の前に川があった
大学の頃に住んでいた町にも近くに大きな川があった
そして今僕は、川からそれなりに離れた場所にいる

中心で、ゆらぐ川が欲しい、
今パソコンを打つ机からは、銀杏の木が見える
風に揺らぐ木々も時には良いが
僕はどうにも川を求めてしまう

とどまらない、ということがよいのかもしれない
明日はもういない、ということは、なんだか格好いい

スナフキンみたく、流離の日々を送ることに少し憧れてしまう
もう少しパパになる僕だが、
スナフキンみたいなパパを想像すると笑ってしまう
「チェーリオ、また来年の春が来たら」

僕の場合、夏だけは、北に行きたいからスナフキンとは逆だ。
サンクトペテルブルクだとか、カナダだとか、
無為なことだけれど、しばし空想してひとり旅に出る

子供ができたら、僕はたくさんのお話をしてしまうだろう
シンデレラの続きを、勝手に作ってしまうのだろう。
不幸せも幸せも、語りたいと思うのは、
勝手だな

空想の世界に触れる子供を見て
結局僕は思い出したいのだ
あの頃のことを

もっと世界が広かった時代を
文化にも論理にも科学にも、反論を許さなかった、
いっさいの障壁のない想像を
思い出したいのだ

小説を書こうとしてるけれど、
構造や、語彙や、個性にとらわれすぎていて
結局止まってしまう
もっと自由でありたいのに

ヒーローが動悸を持ち、障害を乗り越え、
アンチヒーローを倒す
(そしてヒーローはアンチヒーローとなる)

そんな鎖につながれていては
僕は、誰かが書いたものの半分の質も持てまい

自由を
手に入れるのだ
かつて僕の手の中にあり、
そして自ら捨ててしまったそれを