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TO BE FREE

〈自分になる〉ために

あ、春


あなたにとって、季節の変わり目を感じるのはどのタイミングですか?
僕にとっては季節ごとの香りを感じる瞬間です。
今日は、そして「春」を感じた今年最初の日でした。

少しだけほこりっぽい道を自転車で抜ける瞬間に感じた香り
それは甘くて、切ない香り。
不思議なことに、春夏秋冬、僕にとって季節の変わり目を感じさせる香りは
甘くて切ないのです。

とりわけ春の香りは切なく感じさせる気がする。
それはきっと、記憶に刻み込まれてきた「別れ」が久しぶりに
顔を出すからなのでしょう。

「別れ」
僕はそれを決して喜んだことはありませんでした。
ましてや望んだりすることなどありませんでした。
それでも思い出される「別れ」には、
胸を掴まれてしまう。その瞬間はきっと「幸せ」なのでしょう。

胸掴んで涙を呼ぶような(僕は泣くかわりに目線をそらす、「何か」から)
そんな記憶をたくさん持っている僕は幸せなんだという気がしてなりません

いなくなってしまった誰かを想う
元気かなあ、とか、あの時何話してたっけ、とか
そんなことを想いながら春の街を歩くことが好きです

「桜を見に行こう」
そんなことを毎年思いながら、あまり実現できたことはない

一度だけ、ちょっと気になっていた女性と二人で桜並木を歩いたことがあった。
うまくいかない恋愛を楽しんでいたあの頃に
僕はふと立ち返る時がある

sou

もう、その人と会うことはない気がする
会おうと思えば、そう難しいことではないと知っているけれど
もう「会おう」と思うことができないんだろう

思い出が桜に埋もれている
今年は、妻と桜を見に行くつもりだ
その時僕は何を感じるだろう
そして横で笑う妻は何を感じるのだろう

積もり積もって僕の心は窒息しそうなくらいに
甘い甘い香りに満ちているんだけれど
そしてその甘さがとても残酷なものだとも思うのだけれど
そんなこと、考えないようにして
過ごすことが多い

春の高揚感である。
とても危険なそれである
僕は浮遊してゆくどこまでも
僕はひらひらと舞い降りてそして再び
いつまでも一雨来るのを待っているような春に
ふと自分を抱き締めたくなるような夕暮れ
気が付けば夜の闇がそこまで

あなたを思い出したら、それが命の証
あなたを忘れても、それは僕の印

夜の香りもずいぶんと暖かい
こんな日に、
いつだったか僕は僕の町を自転車でひたすらに
走り回ったことがある
たしか一昨年
桜がすでに咲いている通りを
僕は何かしらの音楽を聴きながら進んでいた

ずいぶんと寂しかったんだと思う

あんな幸せな孤独はもう訪れないんじゃないだろうか

そんな気持ちにさせる一日