TO BE FREE

〈自分になる〉ために

雨の街 雨の日の電話


非日常としての空間を求めてというわけではなく
あくまで恋人との日常を重ねるという意味での旅行でした
軽井沢

肌寒い雨の街は静かで、
僕たちは少しだけ気だるく
街を進みました

雨の街にはたくさんの緑があって
僕らはレイモン・ペイネの美術館や
花の散ったローズガーデンや
団子屋や
そうゆう穏やかな場所を望んで
進みました

僕には体力がなく
ところどころ
苦しくなってしまうけれど
そこで無邪気に
ふざける恋人に
本当にありがたいと
思いました

僕がおぼえているだろうことは
多分
観光ガイドにある事実ではなくって
暗がりの湖畔の景色や
モーニングセットのサラダのおいしさや
ペンションでの恋人の笑顔や
あるいは涙なのでしょう


恋人の涙について
僕は言葉をつくし
ぬぐおうとした
それは語られなかった重み
それを僕は抱え込むことを
できるでしょうか

恋人の笑顔は戻った
生活は続いていく
小さな場所に
ロマンティックを
残しながら

部屋に帰ると
ずいぶんと空っぽで
落ち着いていて
僕は少し笑いました

電話が鳴ったときに
僕が目を疑ってしまったのは
昔好きだった女の子で
そして
思い出したのは
僕はかつてこうゆうふうに
携帯の窓に
彼女の名前が表示されることに
とても喜んでいたことでした


だけど僕は彼女の力になることに幸せを感じていました
彼氏のいる女の子の相談にのるということ
ただそれだけのことに周囲の反対はあったけれど

いつだってタイミングの合わなかった僕たちは
決して両思いにはなれず
お互いがお互いに失恋したような
そんな思い出

僕と同じように
来年の5月に結婚するの
という彼女に
そしてその結婚に向けての進行が
あまりうまくいっていないことについて
僕はあの頃と同じように相談にのりました

ただあの頃と違うのは
僕にも今は恋人がいるということ
僕らは何にもなかったように
結婚について語り合いました

愛しさは死ぬことはない
それは
僕にとってMは
2004年のままだから
決して現実には出会えない2004年のMを
僕は2006年のMを通じて探ってみる
それは過去

なんだかむずがゆくて苦しい気持ちになりました
泣きそうなその気持ちは涙を誘いましたが
僕は笑いました

まだ
言ってはいけない

まだ
笑って
「あの頃は好きだったんだよね」
なんて
言えないってことに
少し傷つきました

幸せになってほしい

幸せになる

そのすれ違いに
僕は
切ない気持ちに
前髪をもてあそぶばかり