読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

TO BE FREE

〈自分になる〉ために

次は暗雲垂れ込める


その日も晴れてた、きみと庭で会った
植物を土から掘り出してたきみを僕は掘り出した、おっと失礼
ハイビスカスの垣の中に立つきみの写真を撮った
男も花々も少女たちも木々もそれを見て胸を痛めたよ

愛はめちゃくちゃだ、あの気持ちは一体どこに行ってしまったのか
本気だと思ったんだ、赤ん坊に、指輪に、ひざまずいた愚か者たち
信頼の誓いの言葉、今度生まれ変わっても、いや永遠にと
どこで間違ったんだろう?
嘘だったんだ、すっかり崩れ去ってしまった
現在と過去と未来の亡霊が心にとりついて離れない


BELLE&SEBASTIANの「Another Sunny Day」より。


ここまでの悲嘆ではないのは、僕には今新たな恋があるからだろう。
かつての誓いは、破られる。
そして新たな誓いを立てる。
それなりに厳かにね。

今日は、友達と藤田嗣治展を見に国立近代美術館へ行った。
明日が最終日ということもあって、非常に込み合っていた。
それでも、藤田嗣治の絵は、時代によって大きく形を変えて、
時には切実に、時には懐かしく響いてきた。

でも人間が多すぎて、十分に味わうことはできなかったかもしれない。

藤田嗣治展を見てから、2階以上にある常設展を見た。
岡本太郎横尾忠則をはじめとした日本の近代画が展示されていた。
一回の喧騒が嘘のように、開場は静まり返っていた。
時には僕ら二人しかいないような場面もあった。

日本人のミーハーさというか、
とりあえず藤田だけでも見ておけばよかろうという安易さに、
これだけの素晴らしい絵画が見れるのに来ないということに、
ちょっと悲しくなった。
ちなみに藤田展のチケットで常設展も見ることができる。

しかしながら僕等は人々が一階に集中することで、
とてもゆったり鑑賞できた。
部屋の中心から見回してみたり。


今日会った友人とは、去年の12月以来だ。
大学生の女の子だ。
Sさん、としようか。
ピンクのトップにベージュのロングスカート。
とても女らしい子だ。
若さが凡庸さよりは神聖さを与えているような。

最初に会ったのは、
彼女が大学祭のライブで歌を歌っていたときだ。
矢野顕子を歌う彼女は美しかった。


音楽や絵や文学の趣味がお互いぴったりだった。
向かい合うとその強いまなざしに、年上ながら緊張もした。


最後に会った日に、僕はふられた。
恋人を持つ女性を好きになってしまう僕の性質に、
嫌気もさした。

その後、お互いの気持ちの整理がついてから3月。
会う約束をしていた。
だけど3月。僕は別の恋をして、恋人ができた。

再会は果たされなかった。

女友達をあまり良く思わない恋人に、
僕は何を言っても言い訳しか出てこない。
なんだかすっきりしないから一回会いたいということを、
恋人に言った。
もちろんかんぜんに納得はしなかったけれど、
それでも、もう一度Sさんと会うことになった。



久しぶりに会った彼女に、やはり美しいと思いながらも、
だからといってそれが恋の再燃にならないことに、
矛盾しているかな、
ほっとした。

展覧会を見てから飯田橋に移動し食事をした。
そしてプレゼントをもらった。
ティーセット。

このティーセットには思い出がある。

去年の年末に、
クリスマスパーティーのプレゼント交換用のプレゼントを
選ぶのを手伝ってもらったのだ。
それは幸せなひとときだった。

Sさんが好みだといったカップがあった。
白地に赤のメリーゴーランドの絵がついているティーカップ。
結局色々迷ったあげく、クリスマスカラーの別のカップを購入した。

その赤いメリーゴーランドに今日再会した。
贈られたカップはペアになっていて、
もう一つは青いメリーゴーランドだ。

これは3月の時点で用意されていたプレゼントだったそうだ。
紅茶のおいしい季節を過ぎ、ようやく僕のもとに届いたカップに、
僕は心から喜んだ。

そして夕方からバイトのあるSさんを送って、
僕は一人になった。

神楽坂は奇跡のような快晴で、
そして風はなにもかもを吹き飛ばす勢いだった。
ビルの谷間から、恋人に電話をかけた。

浮かれていたのかもしれない。
それは心配したり不安だったりした恋人にとって、
イライラさせるものだったのだろう。

最初は冗談を言い合いながら笑っていたが、
徐々に雲行きが怪しくなっていった。
実際の空も雲行きが怪しくなって、
暗く暗く雲がたれこめていた。

声のトーンが落ちていく恋人に、
もう少し言葉をかけたかったけれど、
雨が強く降ってきた。
電話は終わった。

今日Sさんと会って楽しかったのは事実だけれど、
僕はどうしようもないくらいに、
恋人を好きでいる。

不安なのはお互い様だけれど、
僕はもしかしたら恋人の不安で、
自分自身の不安を和らげようとしていたのかもしれない。

それは、
本当、
ひどいな・・

僕は、愛の表現が分からない。
表現というなら、
恋人を傷つけることすらも
愛情の表現なんだ。

そして、それ以上に僕が傷つけばいい。


あとで電話をしよう。
ごめんねって、
言おう。