TO BE FREE

〈自分になる〉ために

新宿で、僕は会話し続けた。


昨日は、久しぶりに環と会うことになっていた。
突然入院しいて連絡が取れなくなってから、
約3週間。
その間、強く意識しなかったのは、
「会いたい」のに「会えない」という状況に陥ることと、
それにより僕の精神的不安定さが増すことが明らかであったからである。

約束は20時だった。
昼御飯と買い物のために、正午過ぎには新宿に着いていた。
買い物は、早めに終わった。
というか目当てだったMARC JACOBSの香水が見つからなかったのだ。
代わりのものを考えたが思いつかない。

それで、ひとまず昼飯を食べにプロントに入った。
食事を早々に切り上げ、時計を見ると2時30分。
「今から何しようかなあ・・」
と思っていたら。
横に一人女性が座っていて、
何となく話すことになった。

ナンパと言われても仕方ないかもしれない。
でも。信じてもらえるかは分からないけれど、下心などは特にない。
話し相手が、たまたま横に座っていただけのこと。

見た目はブリジットバルドーに似ていた。
同じようなはっきりした目。そして髪型と口の形と歯の感じ。
ブリジットは60年代を代表するであろう美女であるが、
その女性は、ブリジットを日本的に素朴に、そして健康的にした感じだ。

27歳の外資系製薬会社に勤めるOLさんだった。
池袋で、家30万のところにすんでいるあたりが外資系の凄さだ。
彼女は昨日は特に予定はなく御飯を食べてからジムに行くつもりだったという。

それから、話し込んだ。
大人の女性、しかも営業職の彼女の話は面白く。
こっちもスムーズに話していた。
まるで昔からの友達のように。

彼女には最近付き合い始めた彼氏がいて、その話になったとたん、
堰を切ったように彼女の話は加速していった。
その彼氏のことは大学生の頃から好きで、
突然再開して、連絡を取り合うようになって、付き合い始めた。
彼氏には当時5年間同棲していた29歳の彼女がいて、
そのモトカノと未だ連絡して会っているのを感じる(女の勘で)が、
それについて問いただすことができない。そうだ。
「何て言ったらうまくいくのー?」
それについてあーでもないこーでもないと話しながら、結論は
モトカノのことを今カノとしては気にしてますということを、
穏やかに自然に伝えよう!というところにおちついた。

そんなこんなしてる間に6時を過ぎていて、
連絡先を交換して別れた。
何となくだが、もう、彼女とは会わない気がする。
昨日の数時間の会話が関係性のピークな気がするからだ。

そして、僕は香水の代わりにDVDを探すことになる。
色々な候補が浮かんでは消え。
「ロスト・イン・トランスレーション」を買った。


そして、待ち合わせの時間。
環との再会。
嬉しかった。

いつもと少しだけ雰囲気が違って見えたのは、
伸びた髪の毛と、少しドレッシーな服装のためか。

僕たちは、イタリアンのレストランに向かった。

いくつかの、思ったより量の多い料理を注文し、
会話した。

入院当初は記憶が混乱していたこと。
こうゆう入院がはじめてではないこと。
お兄さんのこと。
お父さんのこと。
欲しいもののこと(サマンサタバサのバック・等等・・)。
夏休みの予定のこと(花火大会・帰省)。
入院中読んでいた本のこと(夢野久作坂口安吾坪内逍遥・太宰・芥川等等・・)。

ああ、なんだかとてもセクシーだと感じたのは、
彼女がとても面白いからだ。
これは、笑わせるということではなく
興味深いの方向。
年下の子で、こうゆう風に思わせる子を僕は他に知らない。
一般的に年下はつまらない。
一度同じような道を辿ってきてる子なら、
話す意味もない。

だが、環は、沢山のことを経験して、様々なことを感じ、知っている。
それに対して僕はひたすら「すごいね!」と思うばかり。

可愛い・・と思う。
きっと、この感覚は危ない。
彼女がいなくなったときの絶望。
ううう・・・

彼女は学校のテストを終えてから、実家に帰る。
しばらく会えない。
僕は、どうするのか。
うん、きっと、誰がいなくとも日々は流れる。
それでも刻み込まれたこの刻印は、
明日を迎えるたびに
深く深く僕を傷つけることだろう。
ずっと一緒なんて、いられないって
いい加減おぼえろよ俺。 

帰りがけ、終電車で一駅寝過ごして、一駅歩いて帰ることになった。
同じような状況になって困っている女の子が二人いて、
家が近いので、送って帰ることになった。

彼女たちは環と同じ学年の大学生だった。
帰りがけ、話しながら帰ったけれど。
とてもつまらなくて、懐かしくて、苦笑していた。
ああ、そうだそうだ。
僕の知っていた大学生は、女の子は、こんな感じだったなあ。
「疲れた」と「だるい」という言語を基本テーマにして、
バイトや授業のつまらなさを口にして。
うん、そうだね。
つまらないね。
なにも、ないんだよね・;

だから、もう連絡先を交換することもなく、
送り届けて別れた。
途中酔っ払いに絡まれそうになっていたので、
僕がいた意味も多少はあったろう。

おやすみ。
おやすみ。

ああ。官能と憂鬱を湛えた夜がまた一つ費消された。
僕は、命を燃やせているだろうか。
日々に、世界に、刻めているだろうか。



今日会う約束をしていて。誕生日プレゼントを渡すつもりだった友達へ。
どうか、体調を、大事にして欲しい。
僕はいつだって引き出せる位置にいるから。
元気になってね。

さて、予定がなくなったけれど町に出ればなんかあろうて。