TO BE FREE

〈自分になる〉ために

今日という日を、僕は忘れてしまうだろう

今日は、部屋からほとんど出なかった。
週末。
好きな人と、友達と、一緒に過ごしたい人はたくさんいるのに、
誰にも声をかけなかった。
誰にも電話しなかった。
こんな日は、久しぶりだ。
部屋で寝て、音楽を聞いて、絵を描いて。
そうゆうすごし方でも、休日は楽しめると思ったんだが、
やっぱり、つまんなかった。

誰かの声を聞きたい。
話を聞いてもらいたい。

それだけ。声をかけたら来てくれる人もいただろうに。
どうにも、やる気が出なくて。
最近、あまりよくない。精神的に。
人前では、楽しまなくては、楽しませなくてはなんて思って、
そうしているけど、一人になったときの寂しさが、痛い。

精神的な病では、ないと思う。まだ。
眠りが浅いけれど、食事はするし、それなりに日常を生きている。
病気になっても、頑張っている人が身近に何人かいる。
一番身近なのは妹だ。
妹が、鬱病になる引き金を引いたのは僕だと思っている。
僕と妹は仲がいい。
何でも話せる。一番心を許せると思う。
妹は、悩んでいた。
進学のこと、友達のこと、家族のこと。
母親は、疲れている。
弟は、真面目で頑固すぎる。
だから、妹は家族の中で僕以外とはあまり話しをしなかった。

それなのに、僕は、そんな家族や地元のことを忘れたくて、
東京に出てきた。
鬱病だと診断されたのは、僕が東京に来てから一ヶ月も経たないくらい。
勿論、僕だけが原因ではないと思うが、
それでも一因だったのは確かだろう。

それからは妹は食事をしなくなった。
昼の弁当は、いつも味噌汁だけだという。
病気になる以前は、妹は誰よりも食べることが好きで、
やせている兄二人を尻目に、着々と体重をつけていった。
最終的には、身長182cmの僕と体重と同じになった。
それはそれで、問題だったと思う。
それが、去年の夏、久しぶりに会ったときにはやせていた。
まだ、適正体重になったくらいで、
むしろきれいになっていたことが僕にとっては救いだったのだが。
僕といるときは、以前とまったく変わらない様子だ。
楽しく馬鹿なおしゃべりをする。
妹も、東京に来ればいいのに、とも思う。
でもできないんだろう。僕より妹はずっと優しい。
母親を、残しておけないのだ。
末っ子は、損だ。
兄たちが選んだ道の隙間から自分の人生を選ばなくちゃいけないなんて。

先日電話をかけてきたスタバで出会ったお姉さんSの症状はさらに深刻のようだ。
体重が、以前は今の2倍あったらしい。
彼女は、食欲を失うのではなく、食でストレスを発散させていた。
いまも、薬を飲み続けている。ホルモンの異常は残るそうだ。
そんな話を、僕は出会ったその日に聞いた。
彼氏にも、言えなかったという。
僕は、ただ、頑張れとも、大丈夫だよとも言えず、耳を傾けていた。

前好きだったMも司法試験を立て続けに落ちたときに病気になったそうだ。
他にも元彼のせいで病気になった友人もいる。
不条理すぎる。真面目な人が、苦しんでいく世の中なんて。

僕は、人の、言えない部分を耳にすることが多い。
それは、とても嬉しい。
何かしらの役に立っていると思うことは、嬉しい。
僕がいつか病気になってしまったとき、
誰か傍にいてくれるかなあ。
話を聞いて、ただ、真剣に聞いてくれるだけでいい。
同情も、批判も、アドバイスもいらない。
願わくば、その相手が僕の恋人だったらいい。


どうでもいい話だが、今好きな人と妹は名前が同じだ。